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2.市町村合併のアメとムチ

「合併すれば、アメをあげるよ。でも合併しなければ、即ムチだよ。」

 とりあえず、市町村合併のアメは2つあります。このアメも、ムチ・ムチと考えたほうが正しいでしょう。


第1のアメ

 2005年までに、合併した場合、10年間は合併する前の各市町村の地方交付税額の合計額を交付する。11年目から、段階的に削減して、16年目からは、完全に合併した人口規模で地方交付税額を交付する。

反論

市町村合併後の、地方交付税額の減額は、どの程度の算出になるのかわかりませんが、小規模自治体の減額よりも、市町村合併後の減額幅の方が大きくなるようです。 そして、今のところ、合併後の地方交付税額の計算方法は、わからないままです。合併前の自治体の地方交付税額は算出できます。


第2のアメ

 合併特例債です。2005年までに合併した場合、合併に必要な事業(道路建設や施設建設事業)費の95%を借金しておこなってもいいですよ。借金額の70%を地方交付税の基準財政需要額の計算のなかにいれますよ。というものです。(この場合、借金額の70%を国が面倒みてくれるというのではないのですが、そのように取れる説明です)

反論

 国の地方財政計画は、1980年代後半から、借金をしても地方単独事業を増やし、経済効果を高めてほしい・そのためには、後に、自治体の借金の返還金を地方交付税で面倒みてあげるよといって、地方交付税額が膨れ上がってきました。いつ何時、このセンスで、国の政策を反省せず、地方が、国におねだりをするから国がやっていけなくなったといって、自己矛盾を繰り返す政策の展開を行うかわからない。すべての自治体が、2005年までに合併したとき、合併特例債は、膨大な金額になります。国は、地方交付税で、ますます借金地獄になります。そうならないために、期限が設けてあります。


アメがムチ・ムチに豹変するとき

 地方交付税額の財源には、枠があります。現在のところ、12兆円くらいが妥当なのでしょう。 そうすると、枠のなかで、合併した市町村には、合併前の計算方法の地方交付税を交付し、合併特例債の返還金も、地方交付税の中で、面倒みるとすると、市町村合併をした市町村の地方交付税額が膨れ上がります。12兆円ほどの地方交付税額の財源から、合併市町村で膨れ上がった地方交付税額を差し引い残金が、合併を選択しなかった市町村に交付されることになります。 合併しなければ、貧乏くじのムチ・ムチで、市町村合併すれば、とりあえず大当たりの地方交付税。

 1万人以下の町村は、町村として認めない。

 4,000人以下の自治体の地方交付税は、年間で5000万円削減するといっています。 山間部の過疎化・高齢化した小さい自治体は、地方交付税額の減額が大きいので立ち行かなくなります。 合併した場合、山や山で生活する人々の暮らしを圧迫します。 圧迫すると、みなさん、過疎化した生活から都市部に移動してきます。 こうなった場合、人間が山で生活することはなく、山の崩壊は進むはずです。 都市部を潤す、水源がなくなり、CO2を削減する森林が森林として機能しなくなる事態がさらに加速します。 今の市町村合併論議は、過疎化した山村を切り捨てる論理です・そのなかで、何がおきてくるのか、を十分に把握することなく、合併を論議することは危険です。


アメがムチに変わるための国の釈明

 合併しなければ、即、地方交付税の減額のシステムは、合併しなかった市町村が悪いのだという釈明をおこなうために、総務庁はアメの期限を設けています。 そして、すべての市町村が合併しないことをあらかじめ計算にいれています。 そうでなければ、地方交付税会計は、膨大な借金をかかえることになるのです。 このような地方財政計画で、国はなりたっていくのでしょうか。 かつて、国は、地方単独事業の借金は、地方交付税で面倒みるよといっていたが、国にはもう地方交付税を交付するだけのお金がない。と、自治体に、地方交付税特別会計の危機を語りかけ、どうしたらいいだろと、相談することが必要だったはずです。 ところが、国は、市町村合併強攻策で締め付ける・しかも、その理由として、地方分権の受け皿を作るため・小さな自治体の職員には、法務力がないから、大きい自治体にしていく…・国家公務員の高慢さ・市町村合併で、国の財政が一息ついたとき、国土の荒廃・人と人とのつながりの希薄さは、もっと深刻なものになっているように思います。


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