1、手術まで

あれっ・しこりだ・乳がん?

こりんと、しこりがあるとおもって、近くの病院にいったのは、昨年の11月25日でした。

乳がんの担当は外科でした。外科の外来の待合コーナーで、初診にあたっての問診表に記入して待っていると知人と出会いました。知人に不安感を見ぬかれそうで居心地の悪い時間でした。

外科医は、問診表をみて、どこですかと聞き、慌てて脱衣。そして、触診。

「ウーンたしかにしこりがありますね。写真をとりましょう。」

写真は、マンモグラフィといって、乳房のX線撮影で、乳房の上下をはさんだ撮影、左右をはさんだ撮影をするのですが、これが痛いのに、びっくりしました。そして、超音波検査です。

1週間後、検査結果がわかりました。

「よい結果ではないので、細胞を検査しましょう。」と次に細胞診。

細胞診というのは、しこりに注射針を刺し、細胞をとって、それを判断するものです。

胸に注射針を刺すので、緊張しました。

細胞診の結果は、ステージVで灰色。

外科医から、「灰色なので、組織検査をして,組織検査で癌だったら、手術です。手術をしたら、手が上がらなくなるかもしれないので、リハビリが必要、3週間くらいは入院です。ここで、手術をしますか。それとも別の病院を紹介しましょうか。職業が職業だから、近い所は嫌う人もいますよ。」という説明。

エッ・・・・病院は、近い方が楽だろうけど、コリンとしたしこりをとるだけなのに、どうして手があがらなくなるような事態になって、リハビリが必要なのだろうと私は、癌ではないだろうという否定の感情のほか、リハビリが必要な治療に納得ができませんでした。手術や治療方法の詳しい説明については、ギブスをはめた人やさまざまな症状の混雑した外科外来で説明を受けることはできませんでした。

 夫が数冊の本を東松山市の図書館から借りて来ました。 そのなかの1冊、「胸のしこりが気になる人が読む本(扶桑社)日馬幹弘署」を読んで 癌だったら 、組織検査を行った場合、癌が散ってしまって癌がどこにあるか分からなくなる事が多く結局、全部乳房をとってしまう結果になること、私が近隣で受診した病院の場合、全部乳房をとってしまうことが推測できました。

又、「私が決める乳癌治療―乳癌体験者と医師からのアドバイス(三天書房・イデアフォー編集)」乳房温存手術後と、ハルステッド手術(胸の筋肉まで摘出する)の写真が掲載されているのを見て、ハルステッド手術であばら骨がうきでた外観のむごさに唖然としました。乳房温存でいきたいと思いました。全部摘出する手術と、癌部分とその周辺だけを摘出する手術で、生存率はかわらないといういことです。

治療法は、医師、病院によって全く異なることもわかりました。 「セカンドオピニオン」といって病院は1ヶ所だけなく何人かのドクターの見解も聞いたうえで、納得でき治療法を決めていくのがよいのだという事もわかりました。

 

書籍から病院を選択

本を数冊読み、慶応病院の放射線科の近藤誠Drを受診すれば、温存で病院も紹介してもらえそうだと検討がつき、12月25日に受診しました。近藤誠Drの診察日は毎週水曜日、予約なしで最初に受診した病院の紹介状とマンモグラフィーの写真をもっていきました。慶応病院の放射線科の水曜日10時近く、私と同じ年代の女性達で混雑していました。夫や家族の人に付き添われている人、帽子やバンダナを巻いている人、ブルーの治療着を着た人もいました。初診の人は、問診票を書く事、ガイドペーパーを読むからはじまります。診察室の横の小部屋で助手の人から、問診票を確認され、セカンドオピニオンがほしいのか、手術先の病院を紹介してほしいのか確認されます。初診の人用のガイドペーパーには 受診までに近藤誠Drの本を売店で購入し、あらかじめ予備知識をもつように書かれていました。

診察は4時過ぎだったので、本「乳がん・あなたの答えがみつかる本・双葉社」を1冊読み終えてしまいました。

ドクターは、住所をみて、「僕も昔、東上線沿線に住んでいたことがあるよ、僕の方が三つ年上だね」といいながら、持っていった紹介状と資料をみて、「ほぼ癌に間違いないよ、手術は大船の僕の友人の雨宮のところで。外科医の腕はとても重要だから。雨宮の所で最初から検査をやりなおし、検査も腕があるから、ある程度わかるよ。」と、あっさりと。触診で、「これは温存でいけるし、リンパは腫れてないから取らなくていいよ。」

最後に「何か質問は。」

「もっと近い病院はありませんか」

「外科医の腕は重要で、入院したら、近いも遠いも同じだし。北海道や沖縄からも雨宮のところにいくのだから」

近藤ドクターは白衣ではなくネクタイ姿でした。白衣を着ないドクターに権威的な医療の押しつけから脱しようという主張があることに気付きました。

1月8日、大船中央病院の胸部外科・雨宮厚ドクターの診察を受けました。

大船までは嵐山からは2時間半程で、病院についたのは9時。ここも待ちあいのロビーは一杯でした。ここでも、受診にあたってのアンケート調査に記入です。雨宮ドクターも、問診票をみて、「僕の方が3つ年上ですね。小川町にはゴルフ場があるでしょう。僕の親父が会員権をもっていた」という話からはじまって、職業の話、そして本題へとはいっていきました。超音波検査を行って、次は細胞検査。細胞検査の結果は「ステージVのBで、より癌の可能性が強くなってきたから、しこりだけとってしまおう。リンパ線は腫れてないから取らなくてもいいでしょう。」

胸にマジックで、しこりの範囲を記して、インスタントカメラで撮影。

最後に「何か質問は。」

1月27日入院、1月28日手術、と決まっていきました。

 

癌を治療する医者と患者に必要なことって

不安も一杯だけれど、入院するまでには、ミニコミ紙の配布と、市町村合併にかかわるホームページを更新できる文章をつくってしまうこと、議会の委員会で進めている男女平等参画条例案の完成の目途をつけることなど、大急ぎで片付けました。

 どのような医療を受けるかある程度学習して医師を選べたことは、幸運です。

アメリカでの医療の経験のある近藤Drと雨宮Drの二人の医師からは、短い時間のなかで必要な情報は提供されました。彼らを訪れる患者は,癌を宣告されにわざわざやってくる人がほとんどです。初めて会う患者の緊張をとき必要な情報を提供し、治療に必要な患者の家族関係・職業等の生活環境の情報を探すコミュニケーション力、自分で治療を選択させていく判断力をわずかの会話のなかでつくりあげていくその術に驚きました。医師として培ってきた会話力で、初対面の人に信頼感をもたせることができる彼らの力を、見習いたいものです。

 

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